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2023.02.17

『笑の大学』という舞台

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机とイス二脚 あとは急須が乗っている棚しかない取調室。

そして登場人物は二人だけ。完全なる二人芝居。

今まで見た舞台の中でも、かなりシンプルな条件下で創られた世界。

25年ぶりの再演となる三谷幸喜作「笑の大学」を観劇してきました。


この作品を知ったきっかけ


多感な学生時代に、初演時の映像をたまたまTVで観てからというもの、

脚本と俳優が生み出す笑いのリズムにくぎ付けになり、いつか生で観てみたい!と願っていた舞台。

今回「PARCO劇場開場50周年記念シリーズ」として、25年ぶりに全国8会場で上演ということで

真っ先に先行予約をしてチケットを手にしました。うぅ…当選して嬉しい…

時代背景


娯楽である演劇や映画、小説などを世に出すためには厳しい検閲をクリアしなければならない

第二次世界大戦への道を進み始めていた昭和15年の日本にて。


『笑い』を観客に届けたい作家の脚本に、

「国が大変な時にくだらない笑いなど不謹慎極まりない!」

無理難題を押し付け修正を指示する検察官。


そんな理不尽な要求に憤慨しつつも、果敢に立ち向かって検閲の条件をクリアしながら

如何に面白くするかだけを突き詰めていく作家の情熱に感化された検察官との関係性が

徐々に変化していく工程はグッときます。


”検閲される側”としての共感


私はWebデザイナーとしてこの会社で働いています。

依頼をいただく制作物に対しては、毎回フィードバックというかたちで第三者にチェックを依頼し、

修正と調整を重ねて最終的に世に出すという工程を踏むのが常です。


今回舞台を観ていて思ったのが、この”フィードバック”というものは、深刻度も状況も違えど

検閲と少し似ているなぁということ。


自分が制作したものに対して、否定されたりNGを喰らい続けたときのストレスと苦しさを想像することで、

この作家の心の折れ具合の疑似体験が出来てしまいました。


最後はもう創ることをやめたくなって投げやりになったり、

相手の言う事だけを反映することに逃げるしかない心境になりそうなものですが、

この作家は絶対に諦めません。

諦めるどころか、最初よりもどんどんクオリティを上げていく。


最後はどうしようもない状況になってしまいますが、このプロ根性と情熱は

自分もずっと持っていなければ…とそんな勝手な共感をしていたのでした。

キャストについて


静かに淡々と始まってから徐々に盛り上がる様は、まるでラヴェルのボレロを聴いているかのようで

どんどん三谷流のセリフの応酬でエキサイトしていきます。


かつて1996年1998年に上演された舞台では

監察官を西村雅彦が、座付作家を近藤芳生が演じましたが、

今回は内野聖陽瀬戸康史というキャスティングというのも興味をそそる要因に。


初演時のイメージでインプットされていたので、今回の配役は新鮮な印象を受けました。

ポスターを見た瞬間、内野さんの激シブビジュアルにやられたのもあります。(中年男性の色気万歳)



96年・98年版の西村雅彦の演じる検察官は、カタブツだけどどこか抜けている風体が

当時『お国のため』に感情を排除せざるを得なかった監察官像と見事にマッチしていました。

しかし今回の内野聖陽の場合は少し人間臭さが増しており、やや現代の警察官臭が強めの印象を受けました。



また、気難しいこだわり屋の作家色が強かった近藤芳生の演じる座付作家に対して、

瀬戸康史の演技はいかにも今風な可愛らしさとフットワークの軽さで当時の抑圧感や切迫感は薄く、

純粋に自分の仕事を愛する作家として描かれていたように感じました。

とはいえあくまでもコメディなので、意図的に戦争色を強く出そうとしていなかったのかなとも思います。



さて、脚本のキャラクターを忠実に再現しているのはどちらか、という問いがあった場合

個人的なしっくり感としては初演キャストです。これは個人差があるでしょう。

ただ、こうやって別の役者がやることによって、いろんな学びもあるのが生の芝居も面白いところ。

※ちなみにこの作品は映画化もされていますが、こちらは最初からキャスティングに納得いかず

ハマれず仕舞いでした。そういうこともある。


映像やリモートでは得られない生の芝居の素晴らしさ


コロナの影響でずっと観劇を自粛していたので、今回の舞台観賞は感慨深いものがありました。

役者の腹から出る声は本当にすごい。会場の空気が振動するのがわかりました。

劇中に検察官の喫煙シーンがあるのですが、煙の匂いがリアルに劇場に広がり (ホンモノの煙草ではない)

ああ、役者はここに居るんだ、この時間を皆と共有しているんだ!という小さな感動すら覚えました。


今回の観劇を機に、また舞台や音楽、映画などを観る機会を増やして

鈍化していた感性をビシビシ刺激していきたいと思います。



お読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

キャンベル

入社年2016年

出身地東京都

業務内容デザイン

特技・趣味"特技:イラスト制作と餃子作り 趣味:ハイヒール集め・インテリア・掃除・映画・観劇"

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